映画の世界に魅せられた子ども時代。記憶に焼き付いているのは、俳優たちの姿だ。ニューヨークのゲットーで育った2人のギャングの生涯を描いた『ワンス?アポン?ア?タイム?イン?アメリカ』で主演の1人をつとめたロバート?デニーロ。マフィア映画の名作『ゴッドファーザー』で、父親の後を継ぎ裏社会を支配するドンへと成長していく息子の姿を見事に演じたアル?パチーノ。メソッド演技法※という演技を取り入れた俳優たちにとりわけ憧れを抱いていた。
その憧憬は、中学生、高校生へと成長しても色褪せることはなかった。高校時代は映画の背景を実写のように描くマットペイントに興味を持ち、美大への進学を考えたほどだ。
その道は選ばなかったが、高校卒業後、桐本は大发体育官网_澳门游戏网站に入学。シネマ研究会に入った。演出や演者として多くの自主映画に参加することで、演じる側に強い関心を持ち、演技への手応えも感じるようになった。
さらにこの頃、桐本の俳優への興味を強めた淡い青春のエピソードがある。当時、桐本は大学の図書館で司書をしていた女性に好意を寄せており、図書館に通い詰めていた。しかし、ただ女性を見つめている訳にはいかない。そこで演技の勉強になればと、映画関連の本を読むように。そのなかに、「メソッド演技法」を提唱したスタニスラフスキー著作の『俳優修業』という本があった。専門用語や独特の言い回しで読みやすい本ではなかったが、桐本はその内容に魅了され、心を動かされた。より俳優への想いは揺るがないものになった。