大学概要【2022年度実施分】実習?体験を基盤としたHACCP教育の充実による能動学修の推進
農学部
MS-26で掲げている価値観、“多様な経験”、“学びを楽しむ”の実現において、実習?体験教育は極めて有効である。食品衛生法の施設基準に則った食品加工施設を活用する食品加工?製造の実体験は、教室で学ぶ食品関連科目の“理論”と、自ら手を動かして学ぶ“実際”とを結びつける実学上極めて重要なコンテンツであるといえる。また、もはや食品安全の国際基準ともいわれるHACCP(危害分析?重要管理点)方式を学ぶことも、ますます国際化の進展が予想される我が国の食品業界を今後支えていく本学科学生にとって、極めて意義深いことであるといえる。すなわち本取組は、身近な題材をベースとした実践教育の場において、食の安全?安心を熟考?実行させる実体験型能動学習推進プログラムである。
ACTIVITY
食品製造?衛生学関連実験、講義:5、6月
2023/01/04
およそ100名の農学部応用生物科学科3年生に対して、食品製造?衛生学実験(応用生物化学実験Ⅶ)を新型コロナウイルス感染予防対策を講じつつ実施した。前半部分では、原料乳、市乳の微生物?理化学的検査等、食品衛生学的品質管理に直結する実験を行い、後半は、チーズや発酵乳等の製造実習?実験を行った。食品衛生的配慮を伴う製造工程や原料の取り扱いにおける基礎的な理論や知識について、必須の講義科目である食品安全?衛生学、畜産食品製造科学Ⅱ等の関連講義と関連させつつ実践と理論を学んだ。
【食品製造学?衛生学的実験の様子】
食品加工実習①
2023/01/04
応用生物化学科2年生の半数強(約60名)に対して、食の安全?安心に関する事前講義を1コマ、ならびに3日間の畜肉加工、1日間の醸造実習を行った。畜肉加工では、ひと班(約6名)あたり、およそ8 kgの豚モモ肉塊やロース肉(およそ4kg)を主原料に、ロースハム、プレスハム、フランクフルトタイプのソーセージ等の加熱食肉製品を製造した。醸造実習では、大豆、麹を用いて豆味噌の製造を行った。実際に手を動かすことで得られる体験と、座学で学ぶ理論とが有機的に結びつく貴重な機会になったことに加え、食品製造工程における安全?衛生管理の厳しさと大切さを併せて体感できたものと考える。
3年次の食品製造学関連講義の中で、それ以前に履修した食品加工実習の受講者と非受講者における食の安全?安心に関する基礎知識の定着性の比較を行った結果、今年度も、受講者と非受講者間で明確な差が生まれた。すなわち本実習受講者の方が、知識の定着性が高く、食の安全?安心に対する意識も高くなる傾向がみられた。しかしながらこの傾向は、本実習の受講者の特性として、そもそも食への関心が高い可能性もあるため、引き続き調査を続け、他の属性の影響も考慮した慎重なかつ適切な解析をする必要がある。
【畜肉加工実習の様子】
食品衛生関連講義におけるHACCP、加工食品の品質管理関連セミナーの実施
2023/01/04
応用生物化学科の食品衛生関連講義において、HACCPの概要と、その制度化、ならびに加工食品(練りワサビ)の品質に関する勉強会を行った。NPO法人 食品安全ネットワークの協力をえて、HACCPは、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全確保を達成する衛生管理手法であることや、ワサビ製品の歴史や品質に関する話題など、幅広く学んだ。
【講義?勉強会の様子】
食品加工実習②
2023/01/04
研究室所属の学生?院生を対象に、嗜好性に優れたエマルジョンタイプのソーセージの開発実習?演習を行った。昨今、代替肉原料としても注目される大豆タンパク質の活用や、組織を滑らかにするためにプロセスチーズを添加するといった工夫を取り入れた製法を自身で考案して試作を行った。大豆タンパク質の添加によって、硬さ等の物性や結着性?保水性が高くなる等、加工特性が改善されることが示唆された。また、細切したチーズを混入させることによって、より滑らかな組織と食感が得られることも併せて示唆された。このことは、本取組の成果の一つとして、これまで学んできた食品製造?食品衛生に関する知識?技術を活用し、安全で良質な製品の製法を自らアレンジ、実践するスキルを習得できたことを示唆するものと考える。
【ソーセージ製造の様子】