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128薬化学 (北垣 伸治) 研究室学生×教員 誌上ディスカッションON-PAPER DISCUSSION薬への関心から研究の道へ研究室で有機化学の基礎研究に取り組む学生 太田さん(以下学生) 高校時代、なぜ薬を飲むと体調が変化するんだろうと不思議に思い、薬について調べてみました。やがて薬の構造がわかるようになって面白さを感じ、自分でも薬を作ってみたい!新しい薬の開発に関わってみたいと思うようになりました。北垣教授(以下教授) 私が主宰する薬化学研究室では、有機化学を基盤とした生命科学分野の基礎研究を行っています。現在は医薬品やこれから医薬品になりそうな物質に対して効率よく合成するための研究を行っています。具体的には新しい反応の反応条件や用いる触媒の開発、どんな反応をどんな順番で使って合成するかといった研究です。基礎研究なので太田さんの興味をくすぐる分野だと思います。学生 そうなんです。将来は薬の研究を続け、もっと深く広く化学を学びたいと思って、この研究室を選びました。より効果がある医薬品開発を目標に効率的な合成方法を研究学生 研究室で推進している新規医薬品化合物の合成に向けた研究において、私はモルヒネに似た構造を持つ化合物の合成研究を行っています。モルヒネは鎮痛剤として用いられますが、私が研究している化合物の類似体は鎮痛効果に加えて、がんの増殖抑制作用があるという研究報告があります。ところが、天然から少量しか採取できないため、もっと多く人工的に製造するために効率的な合成方法を探索しています。教授 複雑な有機化合物を作るにはいろんな方法があります。どんな方法でも、様々な反応を積み重ねる必要がありますが、いかに用いる反応数を減らし、環境にやさしく、作りたいものだけを選択的に作るかが重要です。研究は成功より失敗の方が多い失敗から試行錯誤するのが化学の面白さ学生 私たちの研究は前例がなく、すべて自分で考えないといけないので実験では失敗の方が多いのが現実です。しかし、学生時代に多くの失敗を経験するのは自分の成長につながる大切なことだと思っています。小さな挫折を経験して、自分なりに考察して、次どうしたらいいかと考えることは研究者としても人としても大切なことだと思います。教授 実験科学なので、手を動かさないとわからないことばかりです。理論から「こうじゃないか」と思って実験しても、考察通りにいかないこともある。そうやって試行錯誤して問題を解決し新たな道を切り拓くのが化学の面白さですね。そのような経験やメンタリティーをもつことは、薬学(創薬)研究者のみならず薬剤師として働く人にとっても大切なことだと思います。学生 思い通りにいかないことが多々ありますが、実験結果を考察し、次のプランを先生と相談しながら自分で考えることができるのは楽しいです。研究室ではロジカルシンキングする習慣が身についた上に、挨拶や掃除など人としての姿勢も学ぶことができました。卒業後は大学院に進学して研究を進める予定です。研究者として、人として、自分を磨いていきたいです。

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