Challengers' Action

発信者の思いをきめ細かに伝えるICTで、
地域社会への貢献もめざす欲張りプロジェクト。

情報工3年 村松侑?服部寛大?穴田晃暉、理工3年 大野遥香?香田彩佳?山田千佳

2024年05月10日

ブリッジ?プログラム(2年次以降プログラム)

オモシロそうなことはなんでやってみたい…そんな意欲に満ちあふれたメンバーが集まって、小さなショップや小規模事業者のニーズに応えるICTのプラットフォームを構築したチーム「BenefiTech」をご紹介します。コンセプトは「誰かのために×テクノロジー」です。実社会のニーズを掘り起こしながら進めたこのプロジェクトの中で、メンバーたちは各人の学びや得意分野が化学反応を起こしていく体験をしています。限りなき可能性を秘めたこのプロジェクトの中心メンバーである情報工学部の村松侑さん、服部寛大さん、穴田晃輝さんにお話を聞きましょう。

左から穴田晃輝さん、服部寛大さん、村松侑さん

「食」というリアルなテーマとの出会いが起爆剤に。

「BenefiTech」のメンバーは、アクティブで情熱的。しかし、チーム結成当初は、「何をやりたいのか」が明確になっていなかったとか。

村松さん:当初は、旅にまつわる“何か”がいいかな?と、考えていました。お役立ち系のアプリなどアイデアはたくさん出るのですが、どれもピンとこないんです。

穴田さん:ICT技術を使って誰かの役に立つものをつくりたいと思いましたが、着地点が見えていなかったのでしょうね。

服部さん:他のチームは、やりたいことを決めてから立ち上げる形でしたが、このチームでは技術を育むという目標が先にあり、そのために何をしたらいいかと逆算して考えていたんです。でも、学生の経験値の中では、仕事の現場や実生活から湧き出てくるニーズがなかなかつかめなかった。

村松さん:いま振り返ると、学生であっても社会や地域の中での“困り事”ってなんだろうと考える視点はとても大事。当時の僕たちにはその視点が欠けていました。

時には第三者のチカラも借りて、新たな扉を開く。

試行錯誤するチームに道筋を示してくれたのは、チームの顧問となった情報工学部の川澄未来子教授でした。

穴田さん:どなたかに顧問をお願いしないといけないので、学部イベントのお手伝いを通して気軽に言葉が交わせるようになった川澄先生に頼もうということになりました。

服部さん:でも、川澄先生からヒントをいただくことを期待していたわけではありません。

村松さん:それに、先生から何かを指示されたわけでもありません。行き詰まっていたチームにそれまでとは異なる視点を与えてくれた、そんな感じでした。

川澄先生が示唆したのは、社会の具体的ニーズに向き合うことでした。そのための事例として、料理研究家の中島和美さんをメンバーに引き合わせたのです。中島さんは天白キャンパスの近くでカフェを開き、ケータリングなど食にまつわる事業を展開するプロフェッショナル。当時はECサイトの立ち上げを検討していたものの、ITが苦手なためカフェの常連である川澄先生に相談したことがあったそうです。そんな川澄先生の中でパズルのピースがはまるように「BenefiTech」と中島さんが結び付き、チームへの助言となったのでしょう。中島さんと出会ったメンバーたちは、早速、中島さんにニーズを取材しました。そして、プロジェクトは本格始動へ。

  • 村松さん:中島さんからは、ECサイトを作りたいけれど、カフェを知っている人だけでなくもっと多くの方に見ていただけるものにしたいとの要望がありました。料理に詳しくない僕たちのような学生が見た時でも興味を持ってもらえるようなサイトにしたい、とのことでした。

    穴田さん:仕様書が渡されるのではなく、要望が先にあってそれを実現していくためにはどうしたらいいか。どんな機能をつけたら具現化できるのか。チームで議論を進めました。

    服部さん:ニーズをまとめる作業は思いのほか難しかったです。

    村松さん:そこで、実現したいことをベースに様々なWebサービスを検討して大まかな流れをつくり、中島さんに確認してもらって意見をいただくという作業を繰り返しました。

    穴田さん:こちらから機能を提案したこともありました。単に商品を紹介して販売するだけではなく、食育に対する中島さんの思いが伝わるレシピやコラムなどを掲載する機能をつけてみたら?といった感じで。

    個性と共感で、アイデアを具現化していく。

    様々な個性の持ち主であるメンバーですが、彼らの共通点は、「モノづくりが大好き」なことです。思いつく限りのアイデアを全員で出し合い、様々な角度から検証してECサイトの可能性を広げていきました。時には、議論が広がり過ぎて収拾がつかなくなる場面もありましたが、知らず知らずのうちに発言しやすい風土がチームの中で醸成されていったそうです。そして、それぞれの役割分担も自然に定まっていきました。リーダーとしてチームをまとめ、きめ細かな進行管理やコミュニケーションに気を配る村松さん。Webサイトの機能の実装など技術面で本領を発揮し、プレゼンテーションなどではMCとしても活躍する服部さん。クリエイティビティあふれる穴田さんは、Webサイトをより魅力的に見せるアイデアの宝庫であり、文章が得意なことから文字にまつわる全般を担当しました。

    服部さん:各々が役割を全うしながら、調べたり検証していくうちに答えが見つかっていく。そのプロセス自体が、とてもエキサイティングでした。

    村松さん:中島さんの思いが発信できて、サブスクで商品も購入できる。この2本の柱があるプラットフォームをめざして、それを具現化していきました。

    穴田さん:最終的には、お客さまそれぞれの好みにあった料理を届けたいという中島さんのコンセプトが伝わると同時に、買う人からの要望も伝えることができる。そんな柔軟なコミュニケーションを可能にする機能も付加しました。

    自分たちの学びが実社会で役立つという手応え。

    中島さん自身も、このプロジェクトを通して「私のレシピ作りの中心には食育があったけれど、それをWebで公開するという発想がなかったので、良い気づきを与えていただけました」と話します。このWebサイトは、中島さんの商品構成が決まり次第、ローンチされる予定ですが、ここに使われたプラットフォームは、ショップや小規模事業者などの情報発信ツールとして展開できるよう設計されています。「BenefiTech」では、次のステップとして学内で実施している「Enjoy learningプロジェクト」に申請し、地域貢献につながる活動へと広げていく予定です。

    最後に、「チャレンジ支援プログラム」に参加して気づいた点について聞いてみましょう。

    穴田さん:最初に考えた旅のテーマで進めていたら、学生だけでアプリをつくってストアにローンチしました、という自己満足で終わっていたかもしれません。壁にぶち当たった時には、遠慮なく誰かの力を借りて乗り越えることも大切。そんな打開策を体得できたことは大きな収穫です。

    服部さん:何より、中島さんに喜んでもらえたという成功体験が最高のご褒美になりました。自分たちの学びや知識が実社会で役立つことを体感できましたし、グループワークとして、臆することなく自分の意見を言い、相手の発言も聞くという態度が身につきました。

    村松さん:大学の外に出て、社会とつながって何かを成し遂げるというのは楽しいし、達成感を感じます。「チャレンジ支援プログラム」は、刺激的な仲間や目からウロコの体験と出会える場。ここでの経験は、社会に出て、お客様のニーズを聞く時や、チームで仕事を進める時にも活かせると思います。後輩の皆さんにも果敢に挑戦してほしいと思います。