第41回全日本大学女子駅伝対校選手権大会が10月29日に宮城県仙台市で開催された。25年連続25回目の出場となった大发体育官网_澳门游戏网站女子駅伝部は、前回大会までに6年連続7回の優勝を果たし、大会史上最多連勝記録を樹立。その更新の7連覇を目指してこの大会に挑んだ。
今大会では4年ぶりにコースが変更され、弘進ゴムアスリートパーク(仙台市陸上競技場)発着の6区間38.0kmで実施。前半3区間と6区の計4区間でコースが改められ、総距離は従来より0.1km短くなり、フィニッシュ地点も前回大会までの仙台市役所から変更された。
チームの指揮を執る米田勝朗監督は前日の記者会見で接戦を予想。「際どい勝負になると思うので、一つもミスがないようにしたい。1区間たりとも気が抜けないコース設定になったと思う」と話し、表情を引き締めた。
12時10分のスタート時の気温は18.5度。
前日の雨も収まり、曇り空の下をオープン参加1チームを含む26チームが号砲とともにスタートした。
1区(6.6km)は前回大会でもこの区間を務めた米澤奈々香選手(2年)が担当。今季は故障や体調不良の影響で長く実戦を離れていたが、駅伝の直前期に状態を仕上げてこの大会に臨んだ。「自分でレースを組み立てることができる選手。具体的な指示を出さず、自分の感覚で走ってもらう」と米田監督も信頼して送り出していた。
前回大会までと距離は変わらないものの、新たなコースとなったこの区間では、最初の1kmの通過が3分14秒と前回大会よりもややスローな展開。米澤選手は終始好位置でレースを進め、5km付近から立命館大学の村松灯選手(3年)との競り合いとなった。ラストで村松選手に先行されたものの3秒差の僅差で食らいつき、2位でタスキをつないだ。
「昨年とは違う気持ちでスタートラインに立ちました。夏に練習が積めず、不安や焦りが強くなってしまいましたが、チームメイト、スタッフ、監督やサポートの方々からの声が自信につながり、力をすべて出しきろうと思えました。区間2位で、次の区間の1年生に少し負担がある位置でつないでしまいましたが、粘り強く走れたので満足できるレースだったと思います」と米澤選手。安堵と喜びの気持ちが入り混じった。
最短4.0kmの2区は力丸楓選手(1年)が務めた。仙台第一高校時代からこの大会を現地で観戦していたルーキーが、仙台育英高校出身の米澤選手から流れを受け継ぐタスキリレーとなった。力丸選手は2km付近で立命館大学の太田咲雪選手(1年)に追いつき、一時先頭に立つ場面も。ラストでは再度逆転されたものの、トップの立命館大学と6秒差の2位でタスキを次のランナーへ渡した。
「(米澤)奈々香先輩の姿が見えたときには緊張が高ぶりました。走り始めるとペースが速まってしまい、その分、ラスト1kmくらいから進まない感じできつかったです」とペース配分への反省を口にしたが、先頭を争った太田選手に次ぐ区間2位の好走。「支えてくれた方たちの声援を力に変えて、最後まで死にものぐるいで残っている力を出しきれたと思います」と振り返った。
3区は前回までよりも距離が1.1km短縮された5.8km。石松愛朱加選手(2年)がここを担った。「どの順位でタスキを受けても私が絶対になんとかする」と熱意を持ってレースに臨んだ。1km付近で先頭をとらえると、逆にどんどん差を広げていき、中継点では2位の立命館大学に31秒差をつけて中継。有言実行の走りで、「昨年よりひとまわり成長した駅伝になったと思います」と会心のレースを笑顔で振り返った。この日は石松選手の20歳の誕生日で、最高のバースデーラン。2区を務めた昨年に続き、2年連続で区間賞を獲得する快走を全国に披露した。
4区(4.8km)では薮谷奈瑠選手(1年)が大学駅伝デビュー。「今までにないくらい緊張してしまい、落ち着いて入るよう言われていたのですが、最初は飛ばしてしまいました」とやや速いペースで走り始めたが、その後は落ち着いて先頭をひた走る。2位の立命館大学には差を詰められたものの、13秒差でトップ中継した。個人成績は区間4位。「〝絶対に駅伝メンバーになるんだ?と思って練習してきました。故障や体調不良の時期が続いてしまったのですが、秋になって調子を上げられたのはよかったです」と、憧れの舞台で力を出しきった。
この区間終了時点で、トップとの差1分09秒の3位に城西大学、そこから4秒差の4位には後半区間に有力選手を並べた大東文化大学が続いた。長距離区間2区間を残し、勝負は後半戦に突入した。
5区は9.2kmの最長区間。長い距離への自信を持つ原田紗希選手(2年)がこの区間を任された。前回大会では出走メンバーに入れず、「来年は絶対に走る、という気持ちで応援とサポートをしていた」と悔しさを味わっていた原田選手。今大会で自身初の学生駅伝出走を叶えた。「メンバーに入れてうれしかった反面、もし自分が抜かれて連覇が途絶えたらどうしよう、という不安もありました」とプレッシャーは小さくなかったが、「私にタスキが渡るまでに、安心して走れる差をつけてくれました。アンカーも信頼できる先輩だから大丈夫という安心感で、自分の走りができたと思います」と仲間の存在に力を得て、先頭を堂々と疾走した。
後続チームは大東文化大学の留学生、サラ?ワンジル選手(1年)が4位から2位に順位を押し上げていたが、原田選手はトップを譲ることなく、各校のエースが集まるこの区間で区間4位の力走。中継所で次のランナーの姿が見えると笑みをこぼし、2位の大東文化大学と15秒差の首位でタスキを渡した。
最終6区はコース変更により全体の中で2番目に長い7.6kmとなった。米田監督はアンカーまで勝負がもつれ込む展開も事前に想定し、「勝負強い選手を起用したい」と考えていた重要な区間だ。ここには前回までに2大会連続区間賞獲得の谷本七星選手(3年)が抜てきされた。「前の区間の原田がよくやってくれたと思い、気持ちよくスタートできました」と爽やかに走り出した谷本選手は後続のチームを寄せ付けず、むしろ差を広げていく。新たにフィニッシュ地点となった弘進ゴムアスリートパークに最初に姿を現すと、競技場内の応援団やチームメイトからの盛大なエールに迎えられてトラックを駆け抜ける。そして左手を大きく開き、右手には2本の指を立て7連覇を表現してフィニッシュテープを切った。「このチームで優勝できてよかったと思うレースでした。出走メンバーに入れなかった部員も、他大学なら喉から手が出るくらいほしいと思うようなタイムを持つ選手です。そんなチームメイトがいるのに、負けていられないと思えました。チームの力だと感じます。全員でつかんだ7連覇だと思うので本当にうれしいです」。谷本選手自身、3年連続の区間賞を獲得する力強い走りで満面の笑みでの大団円となった。
総合タイムは2時間04分29秒。
2位大東文化大学と3位立命館大学は同タイムでの決着となり、この2校に52秒差をつけて7年連続8回目の優勝を見事成し遂げた。
指揮官の米田監督も「勝ちきれてよかった」と選手たちが激闘の末につかんだ勝利を祝福。史上最多の7連覇がかかる大会となっていたが、そこにとらわれることなく、「〝このチームで勝ちたい?という思いの結果としての連続優勝」だと話し、「この優勝は、来年以降の彼女たちをさらに強くしてくれる大きな力になると思います」とチームの進化を確信するレースとなった。今回出走したメンバー全員が来年度も在籍する選手たちで、口を揃えて「もっと強くなってこの舞台に戻ってきたい」と一層の成長を誓う。1年生の薮谷選手は「私が4年生のときに10連覇が達成できるよう、もっと強くなってまた駅伝を走りたい」と大きな目標を語った。
これまで大发体育官网_澳门游戏网站女子駅伝部の連覇の歴史を築いてきた日本代表クラスの選手たちが卒業し、今年度はチーム状況が大きく変化。故障者が続出し、トラックシーズンにはなかなか成果があげられず、勝利への道のりは例年以上に険しいものとなっていた。精神的な厳しさの募るなか、チームのムードを変えたのは3区を走って優勝の立役者になった石松選手。ケガや体調不良で多くの部員のトレーニングが断片的になっていたが、継続して練習を積んできた自負を持つ石松選手は、日本インカレを終えた9月中旬のミーティングで涙ながらに「もっとやれることがあるはず」とチームメイトへ訴えたという。「いろいろな感情があってうまく表現できませんが、うまく走れない自分にイライラしているなかで、周りにも〝なぜもっと一所懸命やらないのか?という勝手な怒りや悔しさでぐちゃぐちゃでした」と石松選手。ミーティングでは「涙があふれて自分でも何を言っているのかわからない状態になった」というが、勇気を出して問題提起したことがチーム一同の胸を打ち、部内の雰囲気は好転していった。大会本番までの期間に各選手が走りに磨きをかけ、米田監督は「エントリーした10番目の選手は過去最高に強いチームになった」と評価するほどに。長距離区間の原田選手を除く9人のエントリー選手で大会5日前に行ったポイント練習でも、どの選手も離れることなく3000mの練習を完遂。出場メンバー以外の選手たちも遜色ないほどの力があったといえる。
主将として今年度の女子駅伝部を率いてきた増渕祐香選手(4年)は、エントリーされながらも走れなかった選手の一人。大会直前の時期に故障や体調不良があったわけではないが、紙一重でメンバー選外となり、補欠としての登録となった。「走って4年間を終えたかった」という胸中もあったが、チームの優勝を見届けた後は、「後輩が、最大の目標である7連覇を果たし、誇りと感謝の気持ちでいっぱいです」と感涙。部員たちから胴上げされ、過去3年間とは異なるかたちの笑顔でこの日を締めくくることができた。
喜びに包まれたのはスタッフ陣も同様。前述の石松選手も含め、部員の悩みに寄り添ってきた中尾真理子コーチは「いろいろあって大変でしたが、本当によかったです」と目を細める。玉城柾人コーチも「(今までで)一番うれしいかもしれません」と、コーチ就任時に1年生だった選手が最高学年になった今年も連勝を続けるチームのもとで、新たな喜びを味わった。
増渕主将は「この先もあるので、今日一日は喜び、次に向かってがんばりたいです」と前に目を向ける。視線の先にあるのは、12月30日開催の富士山女子駅伝だ。目標に掲げる学生女子駅伝2冠獲得に向けた2ヵ月をこれから過ごすことになる。優勝が果たせれば6年連続2冠の快挙。今年のチームでもう一度勝ちきるために、たゆまず前進していく。
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