特設サイト第18回 八事キャンパスの薬用植物
薬学部のある八事キャンパスでは再開発計画が進んでおり、研究棟(新2号館)に続いて、この春新しい講義棟(新3号館)が竣工しました。一連の工事の過程でキャンパス内にあった植物の大半を失うことになりましたが、いま新たな植栽が始まろうとしています。
その中で、関係各所のご尽力により、新たな植栽の中に薬用植物を採り入れていただけることになり、現在その準備をしています。植物も生き物ですから、その種苗を入手できる時期や植栽に適した時期があります。必ずしもすべてが一堂に集まるとはいきませんが、育っていく姿を楽しんでいただければと存じます。
その前に、今回は八事キャンパスに現存する薬用植物をいくつか紹介しましょう。
薬学部の正門には、毎年われわれを楽しませてくれる桜が2本ありますが、この桜も樹皮を「桜皮(おうひ)」として、排膿(はいのう)や解毒の作用が期待され、湿疹や蕁麻疹(じんましん)の治療を目的とする漢方薬に配合される薬用植物です(第1回「植物のある暮らし」をご参照ください)。
また、その近くに、モクレン科のホウノキがあります。ホウノキの葉は、飛騨高山の郷土料理の一つである朴葉味噌に用いられることで知られていますが、その樹皮は「厚朴(こうぼく)」として漢方薬や家庭薬に用いられます。漢方では、気の巡りを正しくする作用を期待し、家庭薬では利尿や去痰作用が期待されています。初夏には大きな白い花をつけ、またその大きな葉は冬にかけて枯れ落ち、通学路をその落ち葉で一杯にします。
その横には、薬学部のシンボルツリーにと新たに植えたクスノキがあるのですが、今のところホウノキの方が立派ですね。クスノキは、神社仏閣にもよく植えられる樹木ですが、防虫?抗菌作用のある樟脳(しょうのう)が取れることから、薬学部でもなじみの深い木です。
スロープを上がりきったところには、7号館の北から移植したナツメの木があります。移植の際に多くの枝を払ったのですが、今年も花を咲かせ、実もなりました。この果実が「大棗(たいそう)」として強壮、利水、鎮静などを目的に多くの漢方処方に配合されます。
城薬ホールに続く道の横には、ローズマリーが並び、ちょうど今頃はいろいろな蝶が集まってきています(写真の蝶は、タテハの仲間でしょうか)。雨の日には、雨粒に打たれて、周囲になんともいえない芳香を放つなど、ちょっと乙な風情を醸し出します。
斜面には、平戸ツツジもありますが、その間にはクチナシを、またユキヤナギと列をなすようにレンギョウも植えてあります。クチナシは、その果実を「山梔子(さんしし)」として利胆を目的に用いますし、レンギョウもその果実を「連翹(れんぎょう)」として消炎、排膿、解毒を目的に使います。
植物は、その花や香り、目に鮮やかな新緑や紅葉などで、私たちの生活に潤いを与えてくれるものでもあります。そうした楽しみもありますが、薬学部のキャンパスですから、薬学部らしく、できるだけ「くすり」になる植物を身近に置いていきたいと思います。
(2015.10.19)