特設サイト第91回 漢方処方解説(46)小柴胡湯加桔梗石膏

9月は台風による天候不良が続きましたが、いかがお過ごしでしたでしょうか。台風による公共交通機関の乱れにより、大学の講義などに影響がありましたが、その他被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。

さて、このところ少し涼しい日が続いています。もう一度、残暑がやってくるとも言われておりますが、過ごしやすい季節はもうすぐです。

今回、ご紹介する処方は小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)です。第38回で紹介しました小柴胡湯に桔梗と石膏を加えた構成となっていますが、調べてみると小柴胡湯加桔梗と小柴胡湯加石膏の合方だということがわかりました。

小柴胡湯加桔梗石膏

小柴胡湯加桔梗石膏

小柴胡湯は、「傷寒論」でいう〝傷寒?という疾病の経過において「少陽病」とよばれる病態に用いる処方であり、感冒で考えると、少しこじらせた時期に用いるとされています。例えば、発病後数日が経過し、悪寒と熱感が交互にくる発熱(「往来感熱(おうらいかんねつ)」といいます)、夕方の微熱、胸肋部が張ったような不快感あるいは鈍痛(「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」といいます)、口が苦いなどの症状が特徴的であり、小柴胡湯の使用目標とされています。

また、小柴胡湯は耳下腺炎や中耳炎、リンパ節炎などに用いられるのですが、石膏を加えると、さらに熱や炎症が強いものに適しているとされます。一方で、桔梗を加えたものでは、桔梗と甘草の組み合わせが咽頭痛などに用いる桔梗湯そのものであり、さらに化膿した傷などに用いる排膿湯の組み合わせ(桔梗、甘草、大棗、生姜)も内包されると考えることができ、その両者を併せた小柴胡湯加桔梗石膏は、扁桃炎や中耳炎、リンパ節炎などで炎症と化膿傾向が強い場合に用いるとよいと言えます。そのため、本処方は急性ないしは慢性の扁桃炎、急性上気道炎に応用されることが多く、のどが腫れて、のどや耳が痛む場合に用いられています。

新型コロナウイルス感染症の症状として、これまでに経験したことのないような「のどの痛み」がよく報道されています。日本東洋医学会や和漢医薬学会など漢方の学会で、この新型コロナウイルス感染症の症状改善に有用ではないかと話題に上っている柴葛解肌湯(さいかつげきとう)は、元来インフルエンザのような高熱と全身症状の激しいものに用いることで知られる処方であり、またエキス剤も販売されている処方ですが、医療現場では葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用することで、この柴葛解肌湯を再現できるとしています。

薬剤師としては、二剤の併用によって甘草が重複することとなり、偽アルドステロン症など副作用の発現が気になるところですので、その動向には注目しています。

(2022年10月3日)

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