特設サイト第111回 漢方処方解説(62)清暑益気湯

名古屋も蒸し暑い季節がやってきました。
寝苦しくて、エアコンや扇風機のリモコンに手が伸びるこの頃です。

さて、今回ご紹介する処方は清暑益気湯(せいしょえっきとう)です。「暑気あたり」や「夏ばて」などに用いる処方で、古典では「傷暑(しょうしょ)」とか、「注夏(ちゅうか)病」、中夏病、中暑病と呼ばれた症状に用いるとされます。

構成生薬は、人参(にんじん)、黄耆(おうぎ)、陳皮(ちんぴ)、麦門冬(ばくもんどう)、蒼朮(そうじゅつ)、当帰(とうき)、黄柏(おうばく)、甘草(かんぞう)、五味子(ごみし)の9味です。

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名前がよく似た補中益気湯は10味で、人参、黄耆、蒼朮、陳皮、当帰、甘草が共通する生薬で、柴胡、升麻、大棗、生姜が補中益気湯に配合される非共通生薬です。ともに、李東垣(りとうえん)が記した「内外傷弁惑論(ないがいしょうべんわくろん)」を出典とする「補剤」の仲間です。李東垣が記したときには、清暑益気湯も15味(人参、黄耆、陳皮、麦門冬、当帰、黄柏、甘草、五味子に加え、白朮と蒼朮、升麻、神(しんぎく)、沢瀉、青皮(せいひ、しょうひ)、葛根)として作られ、その後、「医学六要(いがくりくよう)」の中で9味に簡素化されて今日の医療用漢方エキス製剤に至っています。浅田宗伯によれば、この9味の方が即効性であると言われており、漢方方剤も構成生薬の数が少ないほど、切れ味がいいのかと想像してしまいます。

また、構成生薬の中で、人参、五味子、麦門冬は生脈散(しょうみゃくさん)という処方として知られ、上述の「補剤」とともに「内外傷弁惑論」に収載されており、「気」と「水(津液)」不足による症状を改善するものとして用いられています(気津両虚)。暑さや熱による「気」や「水」の消耗、また高齢者が暑さなどで「元気を失った脈」となったときに使うものとされています。

これから暑い夏を迎えます。すでに、熱中症で搬送されたというニュースを聞くようになっていますが、高温多湿という環境の変化に身体が適応できず、食欲不振や下痢、体重減少、疲労感や倦怠感、なんとなく息苦しいとか、手足が重いなど、「夏やせ」や「夏ばて」のサインかなと思ったら、この処方を思い出していただければと思います。 口渇やほてり、多汗など日射病や熱射病により、身体に熱がこもるという場合には、白虎加人参湯をお試しください。

(2024年7月5日)

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