育て達人第136回 水尾 衣里
現場第一主義
人間学部 人間学科 水尾衣里教授
行政の各種審議会?委員会の常連
国や地方自治体の各種審議会?委員会で委員を任されています。メディアに出る機会も多く、2015年11月には名古屋テレビ(メ~テレ)の情報番組「哲人の告白」に哲人の一人として登場しました。締めの言葉は「まずは現場に行ってみる」。そのココロをお聞きしました。
哲人の締めの言葉の本意は。
タワー75で「哲人の告白」の収録に臨む水尾教授
都市計画や建築学が専門なので、スケール感が大事です。行けるところにはできるだけ足を運び、実物を見ることでインターネットや本では分からないスケール感やナマの情報を得られます。自分自身、たくさんのことを学生に伝えようとすると、実際に見たことでないと説得力をもって伝えられません。たとえば、一般には公開していない松竹京都撮影所なども見せてもらったことがあります。「こんな狭いところであんなに迫力のある映画を撮っているのか」と驚きました。
時代をリードするスペシャリストが登場する、わずか5分間のミニ番組でしたが、講義中も含め収録は長時間にわたりました。反響は。
思いもよらないようないろいろな人が見てくれていましたね。友人からは「あんなふうに講義しているんだね(笑)」という反応がありました。学生は「これ僕の先生だよ」と言って家族に紹介してくれたらしく、うれしかったですね。
ゼミ生とも現場に行くのですか。
たとえば中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)には何度か学生を連れて行きました。東京電力福島原発の事故を教訓に海抜22メートルの防波壁が造られていますが、その巨大さが現地に行ってみると実感できます。その際、現場では原子力の専門家の話も聞けます。現場ではキーパーソンに会うようにしています。静岡県の熱海市役所では観光振興の仕掛け人と言われる方からもお話が聞けました。
研究室にはゼミ旅行の際の浴衣がけの記念写真と卒業生の寄せ書きが掲げられています。2015年の卒業生の男性は「先生の何事もはっきりと言ってくださる人柄にひかれ、先生のゼミで本当によかったと思います」と書いています。
毎年、ゼミ旅行では浴衣姿で宴会をします。後輩が先輩にお酒をつぐといった宴会のやり方を学んでほしいからです。専門は違いますが、私の学生のころより、今の学生は大人ですね。空気も読めるし。誰にでも「いい学生たち」とはっきり言えるのはうれしいですね。ただ、私たちのころより休みが少なく、生活の自由度が減っています。アルバイトばかりしていてあちこち行くことをしないのはちょっと残念に思っています。
卒業式、入学式の季節です。メッセージを。
卒業生には、少しでも社会に役立つよう頑張ってほしい。新入生には、将来どんな道に進むのか、あわてて答えを出すことはないと言いたい。毎日変わる自分を見つめてほしい。しっかり見つめてから進路を決めてもいいじゃないかと。人間学部は際立った専門がない分、逆に何にでもなれる。就職先で実践しながら学ぶことも多いと思います。
行政の審議会や委員会の仕事をしたり、シンポジウムのパネリストを務めたり、引っ張りだこですね。
私自身もできるだけ社会の役に立つ研究をし、発言したいと心がけています。まちづくりを研究していると、対象のまちに何らかの縁がないと研究ができません。社会が、都市計画が、今どのようなことを必要としているか、現場を見て、ニーズの情報を取るようにしています。その点、行政機関の委員をしていると、そこで知り合った人たちと縁ができます。大学の外と顔がつなげる人、人脈を築いている人というのは大学にとっても大事だと思います。
大学の内外で多忙ですね。今抱いている夢は。
雑務と教育に追われて、自分の自由な時間がどんどんなくなっています。夢は、ゆっくりと海外視察をすることです。ヨーロッパの建築を何の気兼ねもなく1カ月ぐらい見て回りたい。美しい景観、いい建築をたくさん見たい。クリエイティビティー(創造性、独創性)を落とさないことが重要ですから。そういう現場に身を置きたいと思っています。
この機会に言っておきたいことは。
自由な校風を大切にしてほしい。
タワー75の研究室で「自由な校風を大切にしてほしい」と語る水尾教授
水尾 衣里(みずお?えり)
愛知県出身。名古屋大学大学院工学研究科建築専攻博士後期課程単位修得満期退学。工学博士(東京農工大学)。名古屋女子文化短期大学助教授から2003年、大发体育官网_澳门游戏网站人間学部助教授になり、09年から現職。日本建築学会、環境技術学会、日本エネルギー学会に所属。国土交通省社会資本整備審議会委員、岐阜県高山市都市計画審議会委員、国土交通省中部地方整備局景観アドバイザーなどを務める。趣味はダンスとゴルフ。