育て達人第151回 福田 敏男

マイクロロボット、バイオロボットの世界的な先駆者

理工学部 メカトロニクス工学科 福田敏男 教授(バイオロボット工学)

マイクロロボット、バイオロボットの世界的な先駆者として知られています。100人近い博士を育てた教育力も出色です。国際会議や研究打ち合せでいろいろと内外に飛び回っていますが、シンガポール出張前の空いた時間にインタビューしました。

研究者を志したきっかけからお聞かせください。

子どものころから好奇心に満ちていました。ラジオを作ったり、家にあったスクーターやオートバイを分解して遊んだり。ミシンに油を差す道具に水を入れてアルコールランプで熱し、ノズルから噴き出た蒸気でおもちゃのタービンを回すということもやりました。兄の影響です。高校2年の時、文系か理系か迷いましたが、理系に進みました。

研究室には「ペッパー」のような、いかにもロボットというものが見当たりません。透明な人体模型のようなものは何ですか。

EVEを抱く福田敏男教授=天白キャンパス研究実験棟Ⅱで

EVEを抱く福田敏男教授=天白キャンパス研究実験棟Ⅱで

医療トレーニング?評価用の超精密血管内手術シミュレータ「EVE(イブ)」です。全身の血管を忠実に再現し、医師が手術などを行う際のトレーニングや支援を行うロボットです。カテーテル治療は模擬で行うことができます。医師の技量を磨き、動脈瘤塞栓や血栓除去などの手術の成功率が飛躍的に高くなりました。当初は、カテーテル用医療用ロボットとシミュレータという人体を模した機械を作りました。ロボット開発が目的だったのですが、意外にも、医師は「シミュレータの方が面白い」と言いました。その選択がEVEの開発につながりました。EVEは2006年度の経済産業省のグッドデザイン賞ユニバーサルデザイン特別賞や2013年度の文部科学大臣賞などを受賞しました。

専門の医療?福祉ロボットで他にはどんなものがありますか。

EVEの使い方を実演してみせる福田教授

EVEの使い方を実演してみせる福田教授

歩行補助のための杖型ロボットの研究開発も行っています。高齢者やリハビリ中の人の歩行を助けるロボットです。操作する人の姿勢から転倒しやすい歩行パターンを検知し、転倒を事前に予想して動くロボットです。

研究のキーワードは。

「バイオロボット?メカトロニクス」です。生物のようにさまざまな環境に適応し活躍できるロボットの実現が目的です。顕微鏡の中で動くマイクロロボットやナノロボットの研究もしています。

教え子には博士号を取らせるという方針ですね。

名古屋大学教授時代、教え子には努めて博士号を取るよう指導しました。中国や韓国の留学生を含めて、これまでに97人が博士になっています。博士号を持っていると、いつか役に立つ時が来るものです。

どういう指導法ですか。

本人に「何が好きか」と聞きます。自分でテーマを探し、従来の研究を調べ、新しい問題点を抽出してもらいます。自分なりの解決法を模索し、アプローチし、データを比較、検証します。それをプレゼンテーションしてもらいます。修士2年、博士3年の計5年で論文にまとめていくのです。

本学の学生にメッセージをください。

自分で考えよ、失敗せよ、ということです。失敗は成功の母。急がば回れとも言いたい。自分で考える習慣を身につけたら、卒業しても自分の頭で考えます。さらに、大发体育官网_澳门游戏网站の学生は人柄がいいので、相談すれば助言をしてくれる先生がたくさんいると思います。今は、外国の先生にもメールで簡単に尋ねられる時代です。ちゃんとした学生なら答えてくれます。また、一人でたこつぼに入らないように、とも言いたい。これからの時代はチームワークでする研究が多くなりますから。

尊敬する人や好きな言葉を聞かせてください。

発明王エジソンが大好きです。「天才とは1%のひらめきと、99%の努力である」というエジソンの言葉も好きです。それは持論の「七転び八起き」に通じます。失敗しても自分の着想を大切にしています。

この機会に力説したいことがあればどうぞ。

応用研究の必要性が叫ばれていますが、やはり基礎研究があってこそです。そのためには教育です。「国家100年の計は教育にあり」と強く言いたい。

杖型ロボットと福田研究室の学生ら=天白キャンパス研究実験棟Ⅱで

杖型ロボットと福田研究室の学生ら=天白キャンパス研究実験棟Ⅱで

杖型ロボットを使う福田教授

杖型ロボットを使う福田教授

福田 敏男(ふくだ?としお)

1948年、富山市生まれ。早稲田大学理工学部機械工学科卒、1977年、東京大学大学院博士課程修了。工学博士。この間、1973~75年、米国?エール大学大学院に留学。東京理科大学助教授から1989年、名古屋大学工学部教授。2013年から現職。1998~1999年、IEEE米国電気電子工学協会ロボティクス?オートメーション学会会長を日本人として初めて務めた。IEEE終身フェローなど。2015年秋の紫綬褒章を受章。

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