「ビジネスで地域の課題を解決する」を
指針に活動
以前はアメリカのシリコンバレーで働いていまして、今は「ビジネスで地域の課題を解決する」を人生の指針として活動しています。
地域づくりって楽しいんです。大変なこともありますが、活動することで地域が変容していくのが面白くて、そんなことを皆さんに伝えられたらと思います。
僕は大阪生まれ奈良育ちです。関西の大学に進学しましたが、このまま卒業して働くよりも海外にチャレンジしてみたいと思って、大学を途中で辞めてシリコンバレーへ行きました。音楽配信をするIT ベンチャー企業で働いていたのですが、ちょうどアップルがどんどん成長していく面白い時代でした。そのあと、自分も起業したいと思って帰国しましたが、帰国したら日本はシャッター通りが多くなっていました。そんなときに東日本大震災が起きて、自分のこれまでの経験やスキルを社会のために役立てようと、地方創生に取り組むNPO の活動をはじめました。
当時は、地域でビジネスを起こすといった前例はほとんどなく、いろいろなメディアで活動を紹介していただきました。2017 年4 月には宮崎県新富町でこゆ財団という地域商社の代表に就任しました。この財団で何をやっているかというと、一粒1,000 円のライチを開発しています。ふるさと納税の返礼品にもなっていて、一粒1,000 円しますがふるさと納税で予約完売します。これまでの納税額は100 億円に近い金額です。そして、そのお金を地域の起業家育成に再投資することで、人が集まってくるまちをつくっています。新富町は宮崎市のとなりにある小さな農業のまちですが、高齢化が深刻で現在は農業課題を解決するためのベンチャー企業も設立して活動しています。
地域には埋もれている資源がまだまだある
「896」という数字を見て、なんの数字か分かる人はいますか? これは、消滅可能性のある自治体の数です。もう地域が持続可能ではなくなってきていることを示す数字です。これからは地域がしっかりとお金を稼いで、持続可能性を維持することが大事な時代です。
こゆ財団のビジョンは、「世界一チャレンジしやすいまちをつくる」ということです。このビジョンを掲げたのは、僕が10 年間NPO 活動をやっていて、チャレンジの総量が少なすぎると感じたからです。チャレンジの総量を増やせば失敗も増えますが、そのぶん成功する確率も増えていく。笑顔とお金のバランスのとれた持続可能な社会をつくっていきたいと思っています。ライチ農家さんのメッセージには起業家精神がすごく込められていますので、皆さんまず映像を見てみてください。
(1 粒1,000 円ライチの紹介映像)
見てもらった映像は、宮崎県新富町でつくっている一粒1,000 円の国産ライチの話です。ライチは僕らがやる前からあって、道の駅などで雑多に売られていました。それをリブランディングして、しっかりマーケティングすることによって売れるようになった。
つまり、地域にはまだまだ埋もれている資源があるということなんです。
テクノロジーが地域の可能性を広げていく
僕は関西大学を途中で辞めました。今日は学生さんもたくさんいるので言いますが、大学は辞めたいと思ったら辞めたほうがいいと思います(笑)。辞めてもう一回帰ってくればいいんです。僕は大学を辞めてアメリカで働きはじめましたが、そのあと日本に帰ってきて大学院でMBA をとり、今もスタンフォード大学で授業をとっています。生涯学び続けて、変化し続けないと生きていけない時代だと思います。
いろいろなコミュニティをつくることも大事です。いろいろな職業を経験してみたり、スクールで学んだり、オンラインサロンに入ったり。僕はこゆ財団で代表をやりながら、GRIST という上場を目指している会社も起こして、オンラインサロンもやっています。
いろいろなコミュニティをもっていることが非常に重要です。
「もし今日が人生最後の日だったら?」というのは、スティーブ?ジョブス氏の有名な言葉です。考えてみてください。もし今日が人生最後の日だとしたらどうしますか? 宿題しますか? 絶対しないですよね。僕は学生時代、いつかアメリカへ行きたいと思っていたのですが、親戚が交通事故で亡くなって、「いつかは永遠にやってこないかもしれない、今を生きることが大事だ」と思って、大学を辞めてアメリカへ行きました。
アメリカで学んだことはなにかとよく聞かれますが、この数字をみてください。アップルの時価総額300 兆円。僕がアメリカにいたのは2000 年~2005 年ですが、そのころはアップルの株価はほぼ0 円でした。むしろアップルは赤字で、Windows のシェアが97% という時代。iTunes は著作権切れのジャズしか配信していない、そんな時代でした。それが今では300 兆円。日本の国家予算の3 倍くらいあります。信じられないですよね。なにが言いたいかというと、愛知だろうが宮崎だろうが、どこの限界集落だろうが、テクノロジーの力を使えば、これぐらい跳ねる可能性があるということです。
最近ではChatGPT4 なんかも出てきました。テクノロジーをちゃんと使いこなせば誰でも教授並みの論文が書けてしまう時代です。大事なのは前のお二人が話されていた通りでイノベーション、そして、自分の武器を増やしてやりたいことをやっていくこと、チャレンジしていくことです。
僕はチャレンジをしたいと思ってアメリカから帰国しました。その頃、日本は海外の人からすると憧れの場所でした。でもいざ帰ってきて目にしたのは、シャッター通りだったり、耕作放棄地だったりと問題は山積していました。さらに東日本大震災が起こり、僕はビジネスの力で地域をよりよくしたいと思って活動を始めました。それでスタートしたのがこゆ財団です。
小さな町から大きなビジネスを生み出したい
この中で宮崎に来たことがある人はいますか? 宮崎市の人口は40 万人くらいですが、新富町は宮崎市の上にある、人口16,000 人くらいの小さなまちです。かつては「通りすぎるまち」と言われていましたが、約6 年前に観光協会が解散してこゆ財団ができ、持続可能なまちづくりをしているモデル地域として、「新富モデル」と呼ばれたり、財団が増えたりしています。
やっていることは非常にシンプルで、ちゃんとお金を稼ぐということです。ネットショップと一緒で、1粒1,000 円のライチを売るために、しっかりとデータ分析して、お客様が喜ぶものを提供していく。新商品も開発します。
国産の生ライチを食べたことがある人はいますか? これだけ人数がいても、ほとんどいませんね。自分たちの国でつくった国産ライチをほとんどの人は食べたことがない。これって、愛知にはチャンスがまだまだあるということです。だって、皆さんが知らない地域資源が日本各地にあって、愛知県にもきっとあるということなんです。
今はこゆ財団の経営は一段落つき、メンバーも20 人くらいに増えましたが、新富町は農業のまちで、農家の平均年齢は67 歳です。農家さんとの勉強会で収穫の課題があることが分かり、ピーマン農家さんと一緒に収穫ロボットを開発するベンチャーを立ち上げました。夢はこの小さな新富町から、農業ビジネスで上場企業を生み出すことです。
(ピーマン自動収穫ロボットの紹介映像)
このピーマン自動収穫ロボットは国内でアワードを15 個ほどいただき、最近ではラスベガスで開催された家電?IT 見本市「CES 2023」で、イノベーションアワードを受賞しました。地方にはチャンスがあります。どんな地域でも、どこに住んでいても、さまざまなチャレンジができるんです。
「個」と「つながり」を大切にして生きていく
2023 年の一番重要なキーワードは、「個」です。これからは個でつながっていくことが重要になってきます。
個ってなにかというと、やりたいことをやったらいいということです。でも、やりたいことをやると、同調圧力で周りからなんか言われたりしますよね。でもそれは、「興味関心をもってくれたんだな」くらいにと思っておいたほうがいいです。ただ、それでもめんどくさいですよね。僕らもいろいろ言われますし、先輩たちはもっと言われてきていると思います。
これから地域経済をつくっていくのに、「地方創生DAO」というキーワードはすごく重要だと思っています。「DAO」は自立分散型といわれますが、僕的に解釈すると、中央集権で、東京一極集中という時代はすでに終わっています。これからは個で、オンラインで、分散型でつながっていく時代です。そうやって新しい地域経済をつくるチャレンジをやりはじめています。
僕はメディアプラットフォーム「note」で記事を更新しています。Twitter もどんどん更新しています。Twitter はこれから個人のブランディングツールとして最強になると思います。ですので、ツイッターをやってない人はすぐにでもはじめた方がいいと思います。情報がインターネット上に存在していないというのは、ビジネスでは厳しいですので、ぜひはじめてください。
オンラインサロン(https://note.com/junichisaito/membership)も月額1,800 円でやっています。初月無料です。ぜひ興味のある方は入ってください(笑)。宣伝したいわけではなくて、いろいろテストをしているんです。地域でチャレンジしたいけれど、なかなか一歩踏み出せないという人がいます。それはお金で踏み出せないのか、行動力がないのか、それを試すために初月無料でやっています。誰でも入れます。今日会場に100 名いますので、この中から何人が入るかは僕の社会的実証実験です。
初月無料で100 以上の有料コンテンツが読み放題、見放題、聞き放題で、僕が365 日、毎朝更新しています。一日3 分で稼ぐ力を学ぶラジオみたいなものもやっています。聞き続ければ、絶対に費用対効果はとれます。でも、ほとんどの人はやらないんですよね。それでも会員は100 名ぐらいいて、やる人はみんな伸びていくんです。ちょっと飛躍すると、NFT やトークンを発行して、仮想通貨での資金調達みたいなものにもチャレンジしています。
まさに「個」で「つながる」ということです。月額1,800 円というのは、本一冊分の投資です。本一冊分を自分に投資できないのなら、成長したいと言うのはやめた方がいいです。成長は無理にやることはないんです。成長したい人はぜひ入ってください。今日入ってくれる人には300 円の会員証をあげます(笑)。半分冗談ですが、ぜひみなさん「個」と「つながり」というキーワードを覚えて帰っていただければと思います。
齋藤 潤一 氏
AGRIST 株式会社 代表取締役CEO、一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事
大阪府生まれ奈良育ち。シリコンバレーのIT ベンチャー企業でサービス?製品開発の責任者として従事。東日本大震災を機に「ビジネスで地域課題を解決する」を使命に活動開始。全国で地方創生プロジェクトに携わる。2017 年新富町役場が設立した地域商社「こゆ財団」の代表理事に就任。1 粒1000 円ライチの開発やふるさと納税で寄付金を累計70 億円以上集め、地方創生の優良事例に選定される。2019 年農業課題の解決のために収穫ロボットを開発するAGRIST 株式会社創業。地域金融機関やVC 等から資金調達。2021 年総務大臣賞受賞、Forbes Asia 100 選定、2022 年第10 回ロボット大賞農林水産大臣賞受賞、2023 年CES 2023 Innovation Awards 受賞等その活動はCNN で世界に紹介される。