動画制作プロジェクトに参加した学生たち(参加時はそれぞれ、4年生、大学院1年生)
後列左から 森士さん、伊藤杜哉さん、三並杏実さん、吉村美咲さん
前列左から 中田このみさん、恵島すずさん、家田萌絵さん
PROJECT SUMMARY
どんなプロジェクト?
日進市では、小学3年生が市役所を見学する機会があります。今回の動画は、見学後の振り返りで使われるもの。動画を視聴して、市役所の仕事への理解を深めます。
学校教育での動画の活用の背景には、市のデジタルアーカイブを充実させ、活用したいという想いも。この企画を立ち上げた日進市教育委員会学校教育課長の桃原勇二さんは「従来の社会科副読本を電子化し、2024年度から利用を始めました。さらに、せっかくなら動画などデジタルならではの教材を充実させようと考えたのが、今回のプロジェクトのきっかけです。コンテンツをより良いものに更新できるのはデジタルの強み。市民の方々や連携できる大学の力をお借りして、利用者としてだけでなく制作者として関わってもらいたい。そんな意図もあり、以前からつながりのある大发体育官网_澳门游戏网站さんにお声がけしました」と語ります。
デジタルアーカイブの整備は全国の自治体で進められてきました。しかし、行政の外の人を巻き込んでアーカイブをアップデートする試みは稀有だといいます。先駆的な取り組みに関わるチャンスを得られました。

社会科副読本に動画を実装しました。P45にフルバージョン、P46にショートバージョンが掲載されています。
WHAT WE LEARNED #01
小学生への伝わりやすさを大切に“謎解き動画”を提案

2024年10月、桃原さんから人間学部長の笠井尚教授へ相談が持ちかけられプロジェクトがスタート。人間学部で取り組んでいる学びのコミュニティ創出支援事業「SDGsの課題に取り組む公務員に学ぶ」の活動として笠井教授から呼びかけ、興味を持ったメンバーが集まりました。日進市役所との顔合わせの後、まずはどんな動画にするか企画が練られていきます。
最初に考えたのは、伝わりやすい動画にするために、ただ見るだけでなく小学生が参加できる内容にしようということ。市役所の方の「みなさんらしく作ってください」という言葉にも背中を押され、アイデアを出し合います。そして、各課の名前などを答えにした謎解きを組み込む提案をしました。「学生さんたちの謎解きの発想には驚きました。市役所や学校からは出てきません。小学生に伝える目的をきちんと意識した案だと思いました」と桃原さん。謎解きを作成した家田さんは「謎を考えるのがすごく楽しかったです。自分のひらめき力を活かせました」と話してくれました。
WHAT WE LEARNED #2
それぞれが役割を担い、工夫を重ねた撮影現場
動画の方向性が定まり、監督の恵島さんを中心に具体的な筋書きや撮影の段取りが進められます。初めての動画制作。どう進めたらいいか分からず、難しさも味わったそうです。クリエイティブの領域に詳しい人間学部の加藤昌弘教授にも相談し、シナリオが固まりました。
そして、2025年1月に日進市役所で撮影を実施。監督、カメラ、出演者、裏方など、各々が役割を持って臨みました。現場での試行錯誤もあったようです。「画角やピントの合わせ方を考えて撮影した」とカメラ役の中田さん。「キャラクターの動きの大きさ、しゃべり方を工夫した」という森さん、伊藤さん、三並さん。「キャラクターを支えたり、小道具を用意したり」と進行をサポートした吉村さん。見やすく、伝わりやすい動画にするためにあれこれ模索しました。綿密な準備のおかげもあって撮影はスムーズに終了。約1ヶ月半かけて編集され、動画が完成しました。

WHAT WE LEARNED #03
細部までこだわりのつまった動画が完成!
3月12日、日進市役所で動画の披露会が開かれました。日進市の岩田憲二教育長、教育委員会の担当者のみなさん、デジタルアーカイブシステムを手がけるTRC-ADEAC株式会社の田山健二会長、笠井教授、加藤教授が出席。完成した動画を流され、ワイワイとにぎやかな雰囲気で感想が交わされました。
学生たちからは、企画、撮影、編集で工夫した点などが紹介されます。編集では、テロップの文字や効果音にもこだわりました。「使用する漢字は、市役所見学時点で学習しているかすべて確かめました。ちょっとした音のあるなしで見え方がガラッと変わって。いろいろと試してみるのが面白かったです」と恵島さん。

岩田教育長は、動画の内容を賞賛するとともに、小学生が一台ずつタブレットを持つ時代において、デジタル教材の活用で学習の可能性がますます広がると話します。加えて、TRC-ADEAC田山会長は、デジタルアーカイブの活用が全国的に課題となっている中で、日進市の取り組みは画期的で素晴らしいものだと語りました。
他方で、笠井教授は「市役所のみなさんが楽しそうに仕事について語ってくださったのが、学生たちの良い学びの機会になった」と振り返ります。加藤教授も「チームで動画を作り上げる良い経験ができた。これからたくさんの小学生に見てもらえるのも制作者にとってはうれしいこと。これをきっかけに今後も創作をしてみてほしい」と語ります。


NEXT STEP
動画制作から得た将来につながる学び
参加した学生たちはどのような学び、気づきを得たのでしょう。
「笠井先生に声をかけてもらい、挑戦してみたらとても楽しかったです。チャンスがあったら一歩踏みだすのが大事だと実感しました」
「チームでプロジェクトに取り組むのは貴重な経験だと思います。サークルや部活動以外にも、こうした機会があるのはたくさんの人に知ってもらいたい。大学生らしくて青春を味わえました」
「公務員の方々がどのように働いているか、どうやって市民と関わりを持っているか分かりました」
「少し画角が変わるだけで見え方が変化します。視聴者への伝わりやすさを考える上で、客観的な視点を養えたと感じています」
「日進市の小学生と接点を持つ機会は滅多にありません。たくさんの子どもたちと動画でつながることができました」
「正直、公務員や役所に対してかたいイメージを持っていたんです。けれど、実際に足を運んで印象が変わりました。参加前より視野を広げられています」
活動を振り返り全員が「楽しかった」と語る姿が印象的でした。卒業後に公務員や教員として働くことが決まっている人もおり、今回の経験を仕事でも活かしたいと意気込みます。学生たちの力作をみなさんもぜひご覧ください。進化を続ける日進市のデジタルアーカイブで、この動画がどのように使われ、引き継がれていくのか楽しみです。
