学部?大学院/受賞 宇佐美勉総合研究所共同研究員?元教授,鈴木元哉氏および葛漢彬教授の論文が土木学会田中賞を受賞
宇佐美勉総合研究所共同研究員?元教授(理工学部),鈴木元哉氏(H30年度理工学研究科社会基盤デザイン工学専攻修士課程修了生)および葛漢彬教授(理工学部)の論文に対して令和元年度土木学会田中賞(論文部門)が授与されました.田中賞(論文部門)は,橋梁工学の発展に大きく貢献した論文に与えられる賞です.受賞の対象論文は「ブレース材付き鋼フレーム構造の座屈?耐震解析への初期横荷重法(ILLM)の適用性(構造工学論文集,Vol.65A,2019年3月)」で,例年土木学会定時総会で表彰式を行っていますが,今年は新型コロナウィルス感染症の状況を鑑みて表彰式は執り行わないこととなってしまいました.受賞については,土木学会のホームページ(http://www.jsce.or.jp/prize/prize_list/p2019.shtml)で公表されています.
「土木学会賞選考経過及び受賞理由書」記載の受賞理由(抜粋)は次のようです.本論文は,ブレース材で横補剛された鋼フレーム構造の耐震設計への初期横荷重法(ILLM)の適用について検討し,実務に適用できるレベルにまで高めた論文である.
ブレース材で横補剛された鋼フレーム構造の解析モデル化においては,軸力が卓越するブレース材に対して,初期たわみを与える方法(初期たわみ法)が一般的である.しかし,このモデル化において,繰返し荷重に対しては結果を正しく評価できない場合があることが課題とされてきた.受賞者らはこの課題に早くから取り組み,仮想の横荷重を与える初期横荷重法(ILLM)を提案し,数値解析的な見地からその優位性を実証してきた.対象論文では,軸部材,トラス構造,ブレース材付きフレーム構造を対象に,従来の初期たわみ法との比較を行いながら,ベンチマーク実験の履歴挙動の綿密な分析を行うことで,その成果をさらに深化?発展させ,力学的?材料学的な見地から初期横荷重法の優位性を再検証した.結果として,一般的なバイリニア移動硬化則を用いた実用的で高精度な耐震解析方法の確立にまで至っている.
このように,本論文は鋼アーチ橋などでその耐震性が問題となるブレース材で横補剛されたフレーム構造に対する実用的な設計法の確立に有益な知見を提示しており,鋼橋の信頼性向上に大きく貢献すると考えられる.以上より,本論文は土木学会田中賞に値すると認められた.
宇佐美元教授?葛教授らは4年前にも同賞を受賞されています.鈴木氏は,学部?修士課程在学中,昼夜を問わず研究を重ね,その成果は多くの査読付き論文として国内外の著名学術誌に掲載されています.鈴木氏が修士論文の研究により土木学会賞受賞の栄誉を担ったことは,社会基盤デザイン工学専攻の研究レベルの高さを示すものであり,同時に学生諸君にとって大きな励みになるものと思われます.