育て達人第015回 村上 好生
「モノづくり離れ学生」を鍛える 省エネカー、模型飛行機エンジンで実体験型教育
理工学部 村上 好生 准教授
6月21日に鈴鹿サーキットで開催された省エネカーレース「第22回Hondaエコノパワー燃費競技鈴鹿大会」で、本学のエコノパワークラブが、大学チームの部で昨年に続き優勝に輝きました。同クラブを20年指導している理工学部の村上好生准教授に、「モノづくり離れ」対策として取り組んでいる実体験型教育についてお話を聞きました。
――理工学部の学生たちに省エネカー作りの指導を始めたのはどうしてですか。
学生たちがモノづくりに関心を示さない「モノづくり離れ」が、本学をはじめ全国の工学系大学で深刻な問題になりはじめたからです。20年も前ですが、当時の理工学部交通機械学科が対策として考えたのが省エネカー作りでした。学生たちが興味ある分野のモノを自分で組み立て、調整して動かし、性能を確かめさせるにはピッタリだと思ったからです。ガソリン価格が2倍(約50円であったものが約100円になった)にも跳ね上がり、省エネが叫ばれ始めたころで、環境教育、省エネ教育にもつながり、平成元年から1年生の基礎ゼミナールで始めました。
――「モノづくり離れ」の背景には何があるのでしょうか。
数学と物理で点数を取れる学生しか来なくなりました。鉄道が好きだ、自動車が好きだといった工学への探求心が強いというだけでは入試突破が難しくなったからです。
――鈴鹿サーキットで2連覇ということですが、どんな力が試されるのでしょうか。
雨天の悪コンディションの中、名城からは2チームが出場しました。昨年優勝の「MEGV」チームがスピンしてリタイヤしましたが、もう一方の「Nova」チームが1?当たり559.76kmを記録し、優勝しました。レース参戦では多くの知識や力量が要求されます。基礎知識はもちろん、応用力、デザイン力、問題解決能力と総合的な力量が必要です。参加手続きでも相手は社会人ですのでマナーも求められます。
――エコノパワークラブの学生たちには先輩のノウハウが引き継がれているわけですか。
そうです。基礎ゼミナールから育った学生が中心になっています。部員は毎年20~30人。鈴鹿のほかに年間で約10回程で、秋田、岐阜、愛知、三重、千葉、栃木、広島、山梨県などで開催されるレースに参加しています。私もクラブ部長として、遠征に同行しますが、学生たちと一緒にレース会場近くでの野宿、車中泊がほとんどです。
――夏休みもレースはありますか。
8月24日に広島市で「第9回スーパーマイレッジカーコンテスト広島」があり、20人くらいの学生がNova、MEGVの2チームで参加します。昨年はMEGV号が1?当たりのガソリンで2136.6kmの記録を達成し、大学の部で優勝しました。青森から鹿児島までに相当する走行距離で、名城大のモノづくりの技術水準の高さを証明できました。今年も「2000kmは超えろ」と先輩たちからゲキを飛ばされていますが、早稲田大が「打倒名城大」を掲げています。6月の鈴鹿でも早稲田大を押さえ込んでおり、この5年間、早稲田大は名城大に負け続けています。相当悔しい思いをしているでしょう。
――交通科学科では模型飛行機用エンジンの組み立ても行っていると聞きました。
理工学部のカリキュラム改正が論議された際、当時の交通機械学科で1993年度から開設されたのが「ハンドエンジニアリング」という授業です。モノに触れることによって工学的興味を喚起しようという発想で、私がネーミングしました。模型飛行機用とはいえ、1人1台の本物のエンジンが与えられ、分解し、組み立て、動かし、プロペラが高速回転するまでの作業を15回の授業で行います。プロペラが回り、ピーク状態に達しなければ単位は与えられません。数名の教員の指導で学科生全員が体験しますが、プロペラが回り、高速回転時の爆音を体感した時は多くの学生が感動します。モノづくりの楽しさを実感させるという意味で、「実感教育」と位置づけています。
――「名城育ちの達人を育てる」という大学のミッションをどう受け止めていますか。
もちろん大賛成です。「モノづくり離れ」世代の学生たちですが、チャンスを与えられた学生たちはたくましく、一人前に育っていきます。愛知はモノづくりの拠点。モノづくり関連の仕事に就く学生が多いわけですから、工学的センスを持った、しっかりとした戦力になってほしいというのが我々の願いです。
――時には学生たちのコンパにも顔を出すのですか。
私は酒も飲みませんし、呼ぶなと言っています。のびのびと先生の悪口を言い合うのがコンパです。研究室には毎日ほぼ10時間はいますが、卒業研究の学生たちも常時10人くらいはいます。15年ほど年前、学生が卒業の際、「よかったら使ってくれませんか」と昭和53年製のスズキの2サイクル550cc軽自動車「セルボ」を残していきました。私ならエンジンのプロなので、自在に修理して大事に乗り続けてくれると思ったのでしょう。すでに14万キロを走っていますが、愛知県東郷町の自宅からの通学に使っています。20万キロまでは乗り続けるつもりです。自宅には車5台がありますが全て中古車。エンジンを分解しては油を注ぎ、快適に走らせるのが何よりの楽しみです。
卒業生が残した昭和53年製「セルボ」を愛用している村上准教授。 冷却系統のパイプが破裂してオーバーヒートし、学生たちに押してもらう時も
第22回Hondaエコノパワー燃費競技鈴鹿大会で優勝したNova号
村上 好生(むらかみ?よしお)
福岡県北九州市出身。同県立小倉工業高校、久留米工業学園短期大学自動車工業科、大发体育官网_澳门游戏网站理工学部Ⅱ部機械工学科交通機械コース卒。同学部技術員、助手、講師、助教授を経て准教授。博士(工学)。 専門は熱力学、エンジン、省エネルギー。同学部JABEE推進委員。65歳。