育て達人第160回 岡林 繁
日産自動車の研究員から教授に、「人間特性」を情報科学的に考察
都市情報学部都市情報学科 岡林繁教授(情報工学)
自動車のヘッドアップディスプレイに関する長年にわたる研究とその成果などの功績で2017年度、一般社団法人照明学会の名誉会員に推薦されました。同学会最高の会員資格で、2016年度には本学の赤﨑勇終身教授?特別栄誉教授と天野浩特別栄誉教授/名古屋大学大学院教授が推薦されました。
一般の人にもなじみのあるヘッドアップディスプレイを開発したのですね。
「眼高手低」と毛筆でしたためた岡林教授
日産自動車中央研究所(後に総合研究所)の研究員時代に取り組んでいました。走行速度をスピードメーター以外にもフロントガラスに表示させる装置です。メーターに目を落とさなくても、少しの視点移動で速度を確認できるため、安全性が向上します。人間の認知と情報処理の研究から生み出した成果です。「自動車用ヘッドアップディスプレイにおける前景情報と表示情報の認識について」という研究は、1992年度に照明学会論文賞を、装置そのものは1994年に日本セラミック学会から技術賞を受けました。
1995年度の都市情報学部設置に伴って教授で着任しましたが、どのようなことを研究し、教えてきましたか。
情報科学と実験心理学の境界領域を学んできましたので、教育ではコンピューターの仕組みや演習、色彩科学や三次元情報の認識など「人間特性」が深く関連した情報科学を担当してきました。研究では、自動車交通視環境での、標識?表示の探索応答性や視認性向上の研究をしてきました。最近の自動車用AR(Augmented Reality)表示システムもその一つです。
可児キャンパスからナゴヤドーム前キャンパスに移って1年。どう変わりましたか。
学生はおしゃれになりました。着ているものがあか抜けて、都会的になりました。可児キャンパス時代の単独の学部と違うのは、外国語学部と人間学部があるため、情報が並行して入ってくるようになりました。
受験生向けに、都市情報学部の“売り”を語ってください。
文理融合で工学部的なことから文学部的なことまで幅広い学びが用意されています。いろいろな見方ができるということは絶対的に自慢できます。物事は多角的に見ることで、本質に迫ることができますから。
日頃学生に言っていることは。
シラバスに書き続けていることは、abilityとcompetenceは違うということです。Abilityは「知っていること」、competenceは「物事が解決できること」。実社会に出ると、会社は物事を先に進める能力を求めますから、ゼミでは学生のcompetenceを養うよう心がけています。
座右の銘は。
3月、卒業生に贈った色紙に「眼高手低」と書きました。辞書を引くと、「眼ばかり高く、やっていること(手)は低い」と否定的な意味ですが、私の意図するところは違います。手は眼より低いから、眼を高くしないと、手は余計低くなる。仮に現実の手が低くても、眼を高くするよう心がけ、意識して高いビジョンを抱き続けてくれることを願って書きました。
愛読書は。
最近読んだ本で面白かったのは、井上靖の「孔子」です。
趣味を教えてください。
水泳です。30代で椎間板ヘルニアを患いました。腰の養生のため、プールで泳ぎます。1回行くと1㎞は泳ぎ、週2、3回。私にとって、プールは病院です。
ナゴヤドーム前キャンパス南館のゼミ室でHMDを持つ岡林教授
岡林 繁(おかばやし しげる)
福井県敦賀市出身。1970年、名古屋大学工学部電子?電気工学科卒業、1972年、同大学院工学研究科修了。同年、日産自動車株式会社入社。1993年、博士(工学)。1995年に日産自動車を退職し、本学都市情報学部教授に。本学総合研究所所長などを歴任。照明学会は現在専門会員。