特設サイト第23回 八事キャンパスの薬用植物(2)
第18回の漢方随想録でも記しましたが、八事キャンパスでの薬用植物の植栽が少しずつ始まりました。現在のところ、かの有名な「ベンゼン池(※1)」の中に3種類の植物を入れ、歩道やケヤキの木の下に設置した22マスにそれぞれ薬用植物を植栽し、育てることになっております。植物については、関係各所より、「正しい」薬用植物を入手するように努めており、種や種苗、種イモとさまざまな形で集まりつつあります。入手するにも、植えるにも、種を蒔くにも、まだまだ時間がかかりますから、現状では予告としての看板を見て、楽しみにしていただくしかありませんが…。
どういう植物が入り、生薬としてはどう呼ばれるのか、またどんな効能があるのかなどが記されていますから、一度ご覧ください。
今日は、その中から2つ、ご紹介します。
国道153号線からのスロープを上がったところに、とても枝ぶりの良い木があります。
植栽のために根を切って入れてありますから、落ち着くまでにはまだ時間がかかりますし、今年は花も期待できませんが、モクレン科のコブシです。第11回の「アレルギー性鼻炎と漢方」の回では、見栄えのいいハクモクレンの花をお見せしましたが、生薬としては蕾を「辛夷(しんい)」として用います。名古屋の街では、ちょうど花盛りを迎えております。植栽したコブシは、ハクモクレンほどの大きな花は咲かせませんが、来年にはきっと私たちに春の訪れを告げてくれると思います。
つぎに、不老不死のくすりとしても知られる烏薬(天台烏薬)です。
天台烏薬は、クスノキ科クロモジ属の常緑低木で、その根を芳香性健胃薬として用います。その昔、秦の始皇帝の命で不老不死の仙薬を求めていた徐福(じょふく)が和歌山県新宮市の蓬莱山で発見した「くすり」だという逸話で有名な植物ですが、実は中国原産で天台山(※2)のものがもっともよいとされ、その名が付けられました。
昨今はアンチエイジングという言葉が大流行で、食事や健康食品、さらには化粧品まで広く使われています。抗老化や老化防止という意味でしょうが、年をとることはそんなに悪いことばかりではないですし、すべからく「老い」=「いろいろな病気の原因」でもありません。確かに誰しも病気にはなりたくないですし、健やかに老いたいものです。実際、これぞという不老不死の「くすり」はまだ見つかっていません。美味しく食事をいただくことが長生きの秘訣とするならば、健胃薬である天台烏薬が不老不死の「くすり」であることは一つの道理だなと思いますが、いかがでしょうか。
これから、いろいろな植物を植えて行く予定です。うまくいかないこともあるかもしれませんが、それらも含めて楽しみですね。
(※1)八事キャンパスを象徴する池。詳しくは、2015年12月11日付の「MEIぐる」をご覧ください。
MEIぐる 【施設部】知ってましたか?「八事キャンパスのベンゼン池」
(※2)中国浙江省東部の天台県の北方にある霊山。
(2016.3.18)