特設サイト第25回 漢方処方解説(7)加味逍遙散

  • 加味逍遙散
    加味逍遙散

今回、ご紹介する処方は「加味逍遙散(かみしょうようさん)」です。

この処方は、北宋の大観年間(1107年~1110年)に中国で編纂された「和剤局方(わざいきょくほう)」あるいはその増補版である「太平恵民和剤局方(たいへいけいみんわざいきょくほう)」(1151年)に収載されている「逍遙散」(当帰(とうき)、白朮(びゃくじゅつ)、柴胡(さいこ)、生姜(しょうきょう)、芍薬(しゃくやく)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)、薄荷(はっか))に、山梔子(さんしし)と牡丹皮(ぼたんぴ)を加えた(つまり「加味」した)もので、後代の「内科摘要(ないかてきよう)」(16世紀)を出典とします。

「逍遙散」とは「ふらふらと定まらない愁訴を治す」という意味から名付けられました。 本方は、主として更年期障害(血の道症)、月経不順、流産や中絶および卵管結紮(けっさつ)後に生じる諸神経症状に用いられ、また不妊症、帯下、産後などに応用されるなど、婦人一切の訴えによく効くとされています。

漢方のような伝統医学が主であった頃、世間の医者は婦人の病というと、ほとんどこの処方を用いたそうです。月経が不調になって、熱のふけさめ(今でいうホットフラッシュですね)があり、午後になると逆上して両頬が赤くほてるという方によいとか、そのご婦人の性質がとても怒りやすく、嫉妬深く、逆上するかのように顔面赤く、眥(まなじり)がつりあがり、発狂せんばかりに…と、いわゆるヒステリックな状態によいとされています。
男性でも、いわゆる癇癪(かんしゃく)持ちに用いてよいとされます。

ストレスを感じると、五臓のうち、感情をコントロールしている肝で気の巡りが悪くなり、これが怒りやすくなる原因と説明されます。肝での気の流れが悪くなると、オーバーヒートするがごとく熱が発生し、その熱が上昇してのぼせやめまいが生じるとされています。また、肝の熱が精神活動をコントロールしている心に伝わると、不眠や寝汗になってしまうのもなんとなくわかる気がします。
2014年度の漢方製剤生産高においても第5位に上げられていますから、ストレス社会にとって心強いおくすりなのかもしれません。

(2016.5.25)

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