特設サイト第26回 天候と頭痛
梅雨時ですから仕方がありませんが、湿度の高い日々が続きます。
第4回にも記したのですが、環境の湿度に反応して、身体が重だるいとか、なんとなく胃が気持ち悪いとか、むくんだ気がするとか、そんな不調が現れる季節です。
漢方医学では、こうした状況を「水滞(すいたい)」とか、「水毒(すいどく)」と呼び、身体の中の水がうまく巡らず、どこかで停滞し、それがために不具合を発生していると診断します。水は、私たちの身体では当然必要なものであり、それがうまく巡っていればいいのですが、足りないとか、身体のどこかに片寄っているとか、そんなときにはいろいろな症状として現れます。うまく巡らなくなるのには、いろいろな要因がありますが、天候もその一つです。
一方、頭痛はいろいろな要因で発生します。片頭痛や緊張性頭痛もあれば、高血圧によるもの、月経と関連のあるものもあれば、眼精疲労や肩こり、さらには虫歯や歯のかみ合わせによるものもあり、もちろん風邪をひいたときにも発熱とともに生じますが、天候の変化によるものもあります。
天候の変わり目に頭痛が生じるのは、敏感に気圧の変化を感じ取っているのかもしれませんが、気の巡りが悪いと考えられる場合には、「香蘇散(こうそさん)」が応用されます。香蘇散は、香附子(こうぶし)、蘇葉(そよう)、陳皮(ちんぴ)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)により構成される処方で、中国の北宋代、大観年間(12世紀)に編纂された医薬品の処方集「太平恵民和剤局方」に収載されています。一般的に飲みやすく、気分がふさぐときなどに、気の巡りをよくする処方として知られます。
また、雨で悪化する頭痛も多く経験します。ちょっとしたむくみやめまい、歯痕舌(舌の辺縁に歯の痕がついている状態)など、「水滞」を示す症候があれば、沢瀉(たくしゃ)、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、朮(じゅつ)、桂皮(けいひ)で構成される「五苓散(ごれいさん)」の出番です。同じような症状で、もともと冷え性の場合には「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」が用いられます。いずれにしても身体の中で、水の運行がうまくいかなくなったことが原因で、雨という「湿邪」により症状が増悪したと考えられます。
その昔、わが国の環境を模して「水の中のアジア」と呼んだアーティストがいましたが、まさにその通りで、私たちには水の偏在をさばく「利水剤」が有益なのかもしれません。
追伸
今年も青梅を入手して、梅シロップを作製しました。例年よりも早く、10日間ほどで完成を迎えました。皆様のご家庭ではいかがでしょうか。
(2016.6.23)