特設サイト第51回 漢方処方解説(19)銀翹散
豪雨や地震、台風と自然災害に見舞われることの多い年です。
9月に入ってからは雨の日も多く、気温差と空調により、風邪を引いた方も多いのではないでしょうか。
かく言う私も、いやわが家も家族全員が「のど風邪」にやられてしまいました。 卒業研究が一段落して気が抜けたのかと思いましたが、見渡すとマスク姿をチラホラ見かけましたから、やはり何か流行っていたのだと思います。
咳き込むほどはなく、でも、のどがイガイガして、だるい。
そんな症状でした。
熱感はありましたが、明らかな熱を出すほどには、若くはなかったのですが(苦笑)、この「だるさ」を発熱と捉えて、手近に入手できる漢方エキス製剤で様子を見ようと考えて、服用したのが銀翹散(ぎんぎょうさん)でした。
結論を言えば、「正解」でした。
この処方は、現在の「新一般用漢方処方の手引き」に収載される294処方の中にはないものの、一般用医薬品の中で生薬製剤の一つとして、ドラッグストアなどで販売されています。
構成生薬として、連翹(れんぎょう)、金銀花(きんぎんか)、桔梗(ききょう)、薄荷(はっか)、淡竹葉(たんちくよう)、甘草(かんぞう)、荊芥(けいがい)、淡豆豉(たんずし)、牛蒡子(ごぼうし)の9種が配合されており、製剤化されているものでは羚羊角(れいようかく)が加味されています。
連翹
金銀花
薄荷
淡竹葉
葛根湯や桂枝湯などお馴染みの処方は、以前にもお話した「傷寒(しょうかん)」という急性の感染病に対する処方として、漢や後漢の時代に生み出されたものですが、この銀翹散が生まれた明の時代にも、発熱性?急性の感染症を「温病(うんびょう)」と定義し、考えた医学理論があります。葛根湯や桂枝湯を、辛温解表剤(しんおんげひょうざい)として、身体を温め、外邪を去る治療法としたのと同様に、銀翹散は辛涼解表剤(しんりょうげひょうざい)として、熱を冷まし、外邪を取り去るという治療が可能であることを示したのではないかと考えられます。
風熱の邪が口や鼻から侵入し、肺の防御システムを襲い、寒気をもたらし、ときに発汗をも阻害する。一方で、汗をかく場合もあるものの、スッキリとはせず、身体の抵抗力もなんとなく低い状態がつづき、存在する熱感(熱邪)が口の渇きやのどの痛みを引き起こす、そんな風邪の初期に有効だとされています。
こうした処方の存在は知っておりましたが、実際にその効果を体感したのは初めてであり、とてもよい経験となりました。感冒の中にも、いろんな種類があり、それぞれに合った治療法が伝統医薬品の中にもあり、それが現実においてもきちんと機能することに、あらためて感動しました。
みなさんも、もしものときに、お試しくださいませ。
(2018年9月26日)