特設サイト第5回 漢方処方解説(1)葛根湯(かっこんとう)

  • 葛根湯

すっかりと時間が空いてしまいました。
今年の夏は、台風や雨も多く、暑かったのは6月までという変な気候でした。その間、各地ではいろいろな災害も発生し、大きな被害がもたらされました。被害を受けた方々には、この場をお借りして、お見舞い申し上げます。
秋分の日を迎えるようになって、もう朝晩はかなり涼しくなってきました。
今日は、ふと風邪を引いたのではと思い、葛根湯でも煎じようか、エキス製剤ですまそうかと思っておりましたら、本稿を忘れていたことに気づき、別の汗をかいております。

さてさて、その「葛根湯」です。
もうすっかり「風邪薬」として認知された感がありますが、その特長についてはあまり馴染みがないのではと思います。
処方構成としては、桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)からなる桂枝湯(けいしとう)に、葛根(かっこん)と麻黄(まおう)が加味されたものであり、桂枝湯の加減方と言えます。
古典に書かれている「頭痛、悪風、発熱して、汗なく、項背強ばるもの」という症状を指標に使われることが多く、風邪の引きはじめに寒気がし、汗が出ることなく、うなじから背中にかけて張ってつらいというサインを逃さず使います。一般的に、同じく風邪の引きはじめのような症状で、寒気や発熱、頭痛があっても自然と発汗するような場合には桂枝湯を用いますし、同じく汗が出なくても筋肉や関節の痛みという身体痛があるような場合には麻黄湯の適応であることが多くなります。
これらは、元来、生姜や桂枝など「辛くて」「温める」生薬の作用を、加味された生薬が増強し、より強く身体を温め、寒邪にあたって冷えてしまったことによる病因を改善しようという目的で作られています。
今では、感冒の原因は数多と存在するウイルスのためであり、発熱はそのウイルスを殺すためにある生体防御反応だということがわかっていますが、安易に熱を下げず、逆に身体を温めることで、防御反応を助ける「くすり」が数千年前から存在するということですから、東洋医学も面白いでしょう?

ただし、この効き目も感冒の初期の数日だけ。
症状の違いや発症してからの経過で、また別の処方にしなければならないことも知ってほしいと思います。
落語の「葛根湯医者」よろしく、いろいろなことにも使えますが、その話はまた別の機会にでも。
付き添いの人にまで、効き目があるかどうかはわかりませんが(笑)。

(2014年9月24日)

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